最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)1088号 判決 1967年9月29日
上告人
望月四郎
右代理人
鴛海隆
被上告人
西沢薫
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人鴛海隆の上告理由第一点について。
原判決挙示の証拠関係によれば、原判決の認定した事実は、これを肯認しえないわけではない。
そして、右認定した事実関係に徴すれば、本件一一〇万円の借受金債務の債務者は上告人であつて、西沢和臣はいわゆる物上保証人としての地位にあつたとする原判決の判断は、当審も正当として是認することができる。
原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・選択、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。
同第二点について。
原審がした、所論の主張を認めるに足りる証拠がない旨の判断は、当審として是認することができる。
所論は、採用しがたい。
同第三点について。
他人の債務のために抵当権を設定した不動産の所有者(物上保証人)からその所有権を譲り受けた第三者(以下第三取得者という)は、その抵当権が実行されるときには、その所有権を失ない、かつ、物上保証人自身、通常の保証とは異なり、その抵当物件の限度で債務者の債務について責任を負うにとどまるから、右第三取得者は、物上保証人に類似する地位にあるというべきである。それゆえ、右第三取得者が自己の出捐をもつて債権者に対してした任意弁済に基づく求償関係については民法三七二条、三五一条の規定を準用し、かつ、その求償権の範囲については、物上保証人に対する債務者の委任の有無によつて民法四五九条ないし四六二条の規定を準用すると解すべきであつて、これと同旨に出た原判決の判断は正当である。
ところで、原判決の確定したところによると、原判示の経過で、西沢和臣が物上保証人としてその所有の本件土地に抵当権を設定したのは債務者たる上告人の委任によるものであり、抵当物件の第三取得者たる被上告人は、原判示のように、債権者たる柄沢正市に対し上告人の債務の金額を弁済したのであるから、被上告人が上告人に対しその各弁済金および原判示のような法定利息金の求償権を有することは、前記説示したところから、明らかである。
原判決には、所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。
同第四点について。
本件上告の理由のないことは、前記第一点ないし第三点において判示したとおりである。そして、上訴が理由のないときには、訴訟費用の裁判について不服を申し立てることは許されない(最高裁判所昭和二七年(オ)第七三四号、同二九年一月二八日第一小法廷判決、民集八巻一号三〇七頁など参照)から、所論は、この点においてすでに失当として排斥を免れない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条にしたがい、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)